善き人のためのソナタ★★★★

 アカデミー賞外国語映画賞受賞作品。冷戦下の旧東ドイツでは、思想を取り締まるため、政府は芸術家や言論人も含め監視していたのだが、ある芸術家とその愛人を天井裏から盗聴することになった男の苦悩と変化を描く。ベルリンの壁の崩壊は、まだ記憶に新しい。第二次大戦中の数々の悲惨な出来事に比べると、物理的な暴力という点では比較にならず、日々の出来事は静かに進行するが、それだけに人の心をもコントロールしようとする全体主義の愚かしさがリアリティを持って迫ってくる。人の心の奥深くに響く、骨太な映画である。