ココシリ★★★★★☆

大画面で観るべき映画

 劇場公開時からチェックしていた映画である。DVD化を楽しみにしていた。ココシリ [DVD]
 何せ舞台がチベットである。これ、ホントはぜひとも大画面で観たかったんだよな〜。実はここしばらく我が家の「なんちゃってホームシアター」が故障中のため、32inchのテレビ画面でしか観られないのだ。

映画の力

 しかし、期待に違わぬ傑作である。
 ストーリーはシンプル。カメラは、北京から来た新聞記者の目を通すスタイルで(といっても映画そのものの描き方は第三者視点だが)、チベットカモシカの密猟者を追う山岳パトロールの姿を淡々と追っていく。
 台詞は少なく、出演者は皆寡黙だ。演出らしい演出もないし、作為的なシナリオとも無縁。まして予定調和的なエンディングとは程遠い結末。しかし、最初から最後まで、画面から目を離すことができないような、澄んだ緊張感に包まれている。そして、見終わった後の心地よい疲労感と、静かな感動。近年観た中で、これほどに映像の力を感じさせてくれた作品は無かったのではないだろうか。
 顔を知っている俳優など一人として出てこない。でも、彼ら一人ひとりの、あの存在感は何だ?ヘタな演技よりも、彼らの顔に刻まれた皺のひとつひとつが、山岳パトロール隊、あるいは密猟者の「生き様」を表現していた。

実話にもとづく話

 それにしても、この映画に描かれていることは実話に基づくという。ケータイとパソコンに毒され、人工的な都市空間で飼われることに慣れきってしまった僕らの頭を、ガツンと目覚めさせるだけのパワーが、この映画にはある。
 そんな訳で、★×5に☆をひとつプラス。必見。