クラッシュ★★★★★

ほとんど意地

 今週はやたらと忙しくイライラが募ったが、幸いにして連休は休めそうだ(アクシデントがおこりませんように)。
 今日は記者たちと飲み会があってちと疲れたが、気分を切り替えるために無理してでも映画を観ようと決心、アカデミー賞3部門受賞の「クラッシュ」をレンタルした。何も夜中に無理して映画観なくても…と自分でも思うんだけどね。観られるのはどうせなっちゃんが寝てからだし。

心の底が抉られる映画

 さて、ほとんど予備知識なしに観た映画だが、すばらしいの一言に尽きる。文句無く★★★★★である。クラッシュ [DVD]
 ハリウッドは、時にとんでもないバカ映画を作るが、その一方でこういう作品を見せられると、脱帽するしかない。
 どんな話かと問われて、説明するのはとても難しい。根底には人種差別を描いているのだが、ステレオタイプな告発ではない。善と悪、その両方を内在するのが人間。時にどうしようもない醜悪さ、不寛容さを晒すこともあるが、この映画はそれを肯定も否定もしていない。そうした人間の業というか、悲しみをただ静かに、しかし暖かい目で見守るだけだ。そうして、声高ではなく、人間には善の側面があることをそっと見せてくれる。
 「クラッシュ」は、文字通り冒頭の自動車事故を現しているが、一方で人と人との衝突を表している。ただ、冒頭の台詞にあるように、人と人との心の交わりは(「ふれあい」と言う言葉は嫌いだからあえて避ける)、衝突を通して生まれるものでもあるのだ。

誰もが一度は観てほしい

 観ていて、辛いシーンがいくつもあった。でも、辛さの中から、監督の人間を見るまなざしの優しさが静かに伝わってきた。
 途中、何か所か、自分でも理由がわからず目頭が熱くなってしまったシーンがあった。言語能力が足りないのでうまく説明できないのだが、何だか自分の知らない感情を刺激されたというか、心を抉られた感じがしたのだ。
 それから、きっとこの映画を観た多くの人が同じだと思うが、天使のエピソードには心底参った。緊張のあまり心臓がドキドキになり、最後は涙を禁じえない。
 人によって感想は違うのだと思うが、いろいろな人に観てもらいたい映画です。きっと眠っている新しい自分の感性に気づくはず。