ロード・オブ・ウォー★★★

 本当は、ベタではあるが「Always・三丁目の夕日」が観たかったのだが、さすがにsold out。第二候補の「ロード・オブ・ウォー」を観ることにした。ロードっつっても、「road」ではない。「ロード・オブ・ザ・リング」の「load」である。ロード・オブ・ウォー [DVD]
 今や押しも押されぬ、とんこつ系超・濃厚俳優ニコラス・ケイジ主演の社会派娯楽映画(?)だ。
 ニコラス・ケイジが主演というだけで、もうすでに映画に一定の色がついてしまうのでちょっと心配であったが、見終わってみると、彼が主役だから保っている映画だったな、という感じだ。武器商人を主役に据えた映画なので、ともすると重たいだけの「社会派映画」になりがちなのだが、彼を主役にしたことで、「重たいテーマをシニカルに描こう」という意図は、辛うじて伝わってくる。
 ストーリー自体は単純で、世界中を股にかけ、非合法ぎりぎりのところで「合法的に」武器の売買をする男の姿と、それを追う捜査官の攻防、さらに彼の商売ゆえに家族が直面する葛藤や悲劇を、ちょい明るめのトーンで描いたものだ。とはいえテーマがテーマだけに、戦争に駆り出される子どもたちの悲劇や、世界各地で勃発する内戦の裏に暗躍する武器商人の姿を通し、世界が内包しているどうしようもない矛盾、やるせなさに思いを至らせない訳に行かない。
 にもかかわらず、である。この映画、あまり心に深く残りそうもない。
 それは結局、主人公を不幸にしてみせることを通じて、この映画が「悪事を働く奴は、結局こういう羽目になる」という、実にツマラナイ型どおりのメッセージを発しているからだ。更に悪いことに、「真に責任があるのはアメリカをはじめとする大国の政府である」というごく当然の、しかし新鮮味のない主張を、あからさまにそれと判る形で表現したことが、この映画を思い切り陳腐化させてしまった。
 こういう映画を観ようとする人は、恐らく、はなからそんなことは判っているのである。せっかく、ニコラス・ケイジを使うのだから、それをもう少しひねった形で表現してほしかったなあ、と思う僕は、やはりヒネクレ者なのだろうな。