ウェブ進化論/梅田望夫著

産業革命以来の劇的な変化

 ちょっとまじめな話。
 ここのところ、パソコン、インターネットや携帯電話の普及で社会が劇的に変わって来ていることを実感している。それは、電車の中で「ケータイ」を開いて画面を見ている人の数が尋常でないというような日常風景に表れているのみではない。ホントに日常のありとあらゆる場面で、ネットやパソコンによる情報化が僕らの生活に影響を与えているのだ。ことによると、これは教科書で習った産業革命」以来の大変化なんじゃないかと最近思っている。
 今や、コンピューターシステムや、携帯電話、パソコンのない生活が想像できるだろうか。ほんの10年前には、パソコンや携帯電話を持っている人のほうが少数派だったのに、今や持ってなければ仕事にならない有様。
 経済活動のあらゆる分野にコンピューターシステムが浸透し、手元のパソコンや携帯電話をちょっといじれば、バンキングから買い物、電車やバスの乗り換え検索から飛行機の予約、調べものまで何でもできる。仕事でレポートを作るのだって、ろくに本を調べずとも、その気になればインターネットの検索でちょこちょこっと資料を集められてしまう。
 そんな世の中が当たり前になってしまったが故、人々の「サービス」に求める要求はますますエスカレートして行く。ちょっと商品配達を間違ったとか、電車が1分遅れたとか、少し前なら「良くあるミス」にカテゴライズされたようなことが、今や「許されない」ミスの仲間入りである。ちょっとしたことで、人々もマスコミも目くじらをたてて怒り、「謝罪」を要求する。いまだかつて、日本で「謝罪」という言葉がこれほど濫用されたことは無かったんじゃなかろうか。
 こうした世の中の有りように、何だか息苦しさを覚えてしまうのは、僕が古い人間の部類に入りつつある証拠かもしれないが、もうすこし「いい加減」な世の中でいいんじゃないかと思ってしまう。

ウェブ進化論

 さて、そんなことを考えていたとき出会ったのが、ウェブ進化論」(ちくま新書)という本である。ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)この本は、主に「グーグル(Google)」というモンスター会社の姿を通して、今起きている社会の劇的変化を描いている。上に書いた「息苦しい社会」の話とはちょっと視点が違うのだが、実に興味深かった。
 グーグルという会社は、ただの検索エンジンの会社ではなく、世界中の情報をデータベース化することで、事実上世界中の情報をコントロールしてしまう「神」の立場を具現化しようとしている、ということを判りやすく描いているのだが、なるほど衝撃的だが現実に起きていることであり、愕然とさせられた。これからの世の中を俯瞰する上で、是非必要な視点だと思うので、ビジネスに携わる人もそうでない人も、目を通すべき本だと思う。
 ちなみに、併せて「グーグル Google 既存のビジネスを破壊する/佐々木俊尚著」(文春新書)も読んでみた。視点は「ウェブ進化論」と同じだが、こちらは具体例が豊富で分かりやすい。グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501)

インターネットの「こちら側とあちら側」

 ウェブ進化論、という本でキーワードとなってくる概念のひとつが、「インターネットのこちら側とあちら側」。簡単に言うと、パソコンなどのハードウエアが「こちら」で、インターネット上に構築されたサービスが「あちら」である。誰もがうすうす体感していることではあるが、最近、パソコンの性能云々よりも、ヤフーやグーグル、アマゾンなど、パソコンの性能如何に関わらず(もちろん一定のスペックは要求するが)ネットの向こう側で提供されるサービスに、ユーザーの注目の比重が移りつつあるという現実がある。
 グーグルという会社が、マイクロソフトを猛追して、今やインテルを抜いて2位に浮上しているというのは、まさに「こちら」と「あちら」の対決の構図なのである。

グーグルアース(Google Earth)恐るべし

 これらのオハナシを、簡単に体感できるサービスがある。それが「グーグル・アース」。実はこのサービス、聞いたことはあったのだが今回これらの本を読んだことをきっかけに、試してみた。日本ではまだサービスがないが、アメリカのサイトから簡単にソフトがダウンロードできる(http://earth.google.com/index.html)。
 パソコンにそれなりのスペックは要求するものの、はっきりいって、これは驚愕すべきソフトだ。ぜひ試してみるべきだ思う。簡単に言うと、地球上の航空写真と地形をまるごと見ることができるソフトなのだが、少なくとも僕は、インターネットの「あちら側」に、このようなサービスが無料で構築されていたことそのものに本当にのけぞった。特に、「Buildings」「Terrain」のチェックマークをONにして、マンハッタン島やグランドキャニオンから富士山まで、斜めからアプローチしてみると、その精度に本当に驚く。それにしてもしかし、我がマンションの窓まで見えてしまうとは一体…
 ちなみに、パソコンのスペック上これが無理なら、グーグル日本版の「マップ」をクリックし、自分の住所を入力してみるといい。表示される地図の右上にある「サテライト」という目立たないボタンを押した瞬間、きっと驚くはずだと思う(知ってる人の方が多いのかな)。地方の場合はどうかわからないけど。
 それにしてもこれからの10年、いったいどのような世の中になるのか?
 何だか凄いことになってきた…