エターナル・サンシャイン★★★★

 やっと借りられた。ここんとこ大作に飽き飽きしていたので、質の良い小品を探していたのである。エターナル・サンシャイン DTSスペシャル・エディション [DVD]
 地味映画ながら、なかなかの豪華キャストだ。主演はジム・キャリーと「タイタニック」のケイト・ウインスレット。脇役は、「ロード・オブ・ザ・リング」でその地位を固めたイライジャ・ウッドスパイダーマンで異彩を放ち、最近ではディカプリオと付き合ってるというキルステン・ダンストらである。
 自分をフった女性が、自分にまつわる記憶をすべて消去する治療を受けたことにショックを受けた主人公が、自分も彼女の記憶を消そうとする。…が、その治療過程で見る夢の中で彼女との思い出をたどるうち、自分が彼女をまだ愛していることに気付き、記憶消去を阻止しようとするのだが…というお話。
 複雑なストーリーだと途中で理解が追いつかなくなるという弱点を持つ僕としては(要するにおバカ)、この手の時間軸がこんがらかった話は苦手なので、気合を入れて観たのだが、杞憂に終わったようだ。
 やっぱり、大切だった思い出とか愛とかが失われていく過程ってのは、実に切ないものなんだよな。映画は、このあたりのやり切れなさを、スタイリッシュな映像で丹念に追って行く。主演ふたりの演技が、また自然で実に良い。コメディタッチの作品でもあり、決して重たくはないのだが、すっかり感情移入してしまった。
 記憶を消去する過程の主人公の夢の中が映画のメインなのだが、「夢の中らしさ」の表現がまた上手い。夢の中って、ゼッタイあるはずのないことが起きていても疑問を抱かないとか、何となく辺りがぼやけていて不安感が募るような独特の感覚があるものだが、そのあたりの表現が絶妙なのだ。このあたりのちょっと現実から脱線したヤバさ加減、あの「マルホランド・ドライブ」(超苦手映画!)の表現方法にも通じるものがあった。
 エンディングもまた後味が良い。
 映画らしい映画を観たな、という満足感がありました。