STEP INTO LIQUID☆☆☆☆☆

 夜は、以前からチェックしていたサーフィンのドキュメンタリー映画、「ステップ・イントゥ・リキッド」を見る。もちろんオクサンは興味なしにつき、深夜に一人で観た。ステップ・イントゥ・リキッド [DVD]
 この映画は、1964年公開のサーフィンドキュメンタリー「エンドレス・サマー」の監督の息子が制作した映画ということで、話題になっていたものだ。世界のあちこちに生息するサーファー達の、サーフィンへの情熱とビッグウエイブライディングの模様、それに様々な新しい形のサーフィンムーブメントを中心に記録された映画である。
 かつて自分が心身ともにドップリはまっていたのはウインドサーフィンだが、登場するサーファー達の語る人生観やサーフィン観には、いちいち頷かされた。このスポーツの常で、サーフィン(ウインドサーフィン)を語れば語るほど主観的になってしまい、本人がアツイのに聞いてるほうは「へぇー」という感じになってしまうものだ。それにサーフィンに何となく付きまとうアウトロー的なイメージと相俟って、なかなか市民権を得たスポーツになりにくい。
 まあ確かに、サーフィンは単なるスポーツではなく、はまれば嵌るほどそれはライフスタイルそのものになってしまうのだが、そのあたりの感覚というのは、実際にサーフィンしてみて、波と風と一体になった者にしか判らないものなのだ。本作には、「レジェンド」と呼ばれるようなサーファーが登場するが、彼らの目がたたえる光の穏やかさは、ある種聖職者のそれに近いものなのだと確信する。
 ちなみに極端だけどそのへんの感覚をわかり易く(?)描いたアクション映画の秀作に、キアヌ様主演の「ハート・ブルー」がある。これは傑作なので、サーフィンに興味なくても是非観るべし。
 それにしても、すっかりウインドサーフィンから遠のいてしまったものだ!最後に乗ったのは、何年前だろう。
 ウインドに乗らなくなってから海を見に行って、例えば10m位のちょうど良い風が吹いており、ウインドサーファーが思い切りセイルを後傾させて海面をかっ飛んだりしているのを見るとき、始めの頃感じたのは「焦燥」。何でオレはこんなところで唯見ているのだ、自分も乗らなきゃという、焦り。その次は「怒り」。畜生、乗りたいな、何で乗れないんだ、というもの。そのあとは「羨望」。羨ましい、自分も乗りたい。そしてその気持ちはいつしか「諦め」へと代わり、最近は「憧れ」にまで遠ざかってしまった。
 学生時代の仲間も、子どもが出来たり仕事が忙しかったりで、似たり寄ったりの様子。あの頃は、浜に行けば必ず誰かがいたのにね。もっとも、しばらく前に、なっちゃんと当時のゲレンデだった千葉の検見川浜に行ったら、一緒にウインドしてたチームの仲間とばったり会ってしまってお互い大いに驚いたけど。でも彼も子連れで来ていたのにはただ苦笑いだった。彼も、風が吹いてくるとフラフラっと浜に出かけてしまうらしい。
 話がだいぶ逸れた!この映画は、ドキュメンタリーだし、サーフィンに興味ない人が見ても途中で飽きること請け合い。映画の出来としても、そんなに素晴らしいわけではない。
 でも、すばらしいチューブライディングや、航行する大型タンカーの起こす波でサーフィンする「スーパータンカーサーフ」、海岸から160キロの沖合いに数十年に一度現れるというビッグウエーブを求め続けた男たちの物語など、めったに見られない記録も数多し。
 特別評価ということで、白星ながら五つ星としよう。