ミリオンダラー・ベイビー★★★★☆

 楽しみにしていた映画なのだが、くたびれた週末の深夜に見るには、テーマが重かった。予想はしていたものの、イーストウッドの語る「人生」の重さにノックアウトされてしまった。ミリオンダラー・ベイビー [DVD]
 ひとことで言うと、つらい映画だ。前半は基本的にサクセスストーリーだが、後半はどうしてここまで、というくらい、容赦がない。
 だけど、生きる、ということの残酷さを表現するのには、最高の題材だったのかもしれない。お涙頂戴とか、思いやりという名のお仕着せとか、予定調和を徹底的に廃したとさえ思われる物語の展開に、しばしば身悶えしながら観たが、最後はすっかり打ちのめされてしまった。エンドロールには、ただただ無言。しばらく、余韻が残りそうだ。
 ファイトマネーで貧しい母に家を買ってやり、浴びせられる言葉とその後の仕打ち。幼い頃飼っていた足の不自由な犬のエピソード。フランキーの、書いても書いても返送されてくる娘宛の手紙。一つ一つのエピソードが辛いが、でもそれが生きるということなのかもしれない。辛いながらも爽やかなのは、ひとはみな結局自分の人生をひとりで生きていかなくてはならない、という重い事実を、しっかり見つめて描いているからなのだろう。
 マギーはフランキーに父を、フランキーはマギーに娘を重ねていたのだろう。それだけに、最後はあまりにも辛すぎる。それでも結局、イーストウッドの描きたかったのは、究極の愛なのだろう。純文学系に属する傑作だと思うが、僕には少し辛すぎたので、★がひとつ☆になった。
 こういう映画は確実に心の糧になっている気がするが、ヘタレの僕としては、さて次はアホらしいコメディでも観るかなあ、という気にさせられてしまうのであった。
 ちなみにオクサンは、「湖池屋スコーン」をかじりながら最後まで観ていたが、「思ったより面白くなかった。よくわかんない」と言い残して、さっさと寝に行ってしまったのでありました。実もフタもない…