ライフ・アクアティック★★★★★

 ライフ・アクアティック [DVD]説明がホントに難しい映画だ。一言でいうと、「かつてはカリスマだった落ち目の海洋学者(冒険家)兼記録映画家の、最後の大冒険」ってとこだろうか。DVDの特典映像で、出演者がこぞって、ストーリーを説明することの難しさを語っていたが、皆映画には大満足、という感じだ。ケイト・ブランシェット(ロード・オブ・ザ・リングガラドリエル役!気付くのに30分かかった)は「この映画を説明するには一年かかる」とまで言ってた。
 とは言え、映画自体は難しいものではない。一種のコメディーなのだろうけど、不思議なストーリーに、それぞれクセのある登場人物たち、舞台劇のような演出などがあいまって、極めて独特な世界を作っている。この空気感になじむまで、少し時間を要したが、入り込んでしまったら何だか魅了されてしまった。基本的におバカな話なのだが、バカをまじめにやっている人たちの描き方に、何と言うか愛があるのだ。演出も非常に細かく計算されていて、画面の端っこに映っている登場人物の動きにニヤッとさせられることもたびたび。ドタバタ劇なのだが、最後には大団円というか、カタルシスがきちんと得られるのも憎い。
 それと、音楽のセンスが抜群!主張せず、こじんまりとうまく映画の中に納まっているのに印象深いことこの上なし。美術センスもいいしね。芸術性、高いと思う。
 言わば、観ていて自分のあまり知らない感覚を刺激される映画だった。例えば、タランティーノの「パルプ・フィクション」とか、デビッド・リンチの「マルホランド・ドライブ」(自分が見た中でいちばん怖い映画!もう絶対観られない。誰か同じ感想の人、いませんか?)を観た時の感じというか。世界が、広がります。
 監督は、ビジネスとしてではなく、本当に映画を愛しているんだな、ということがよく判る。こういう世界を描ける人、そして監督という仕事に、何だか嫉妬してしまったのだった。
 でも、好き嫌いのある映画だろうなあ。ある意味オタク色濃いし。TSUTAYAではたくさん仕入れてたみたいだけど、そんなに一般受けするとはとても思えん。そこいらの若いカップルが最初に見る映画としては最悪かもね。でも2人ともこれが好きなら、いいカップルになるに違いない。
 ちなみにうちのオクサンは、途中で眠くなったらしく、退散しました。相変わらず趣味が合いませんな。そのあとが面白かったのにねえ…