きみに読む物語★★★★

きみに読む物語 スタンダード・エディション [DVD]
 映画評や予告編を観て、これは観なければ、と思っていたので、レンタル開始日に借りた。まずはオープニングの、明け方の水面をすべるボートシーンの美しさに釘付けになる。映画はこうでなくっちゃ。
 ストーリーそのものは、よくある悲恋ものがペースなのだが、認知症カップルが過去を振り返る形になっているのがミソである。
 老人ホームのような施設で、ノートに書かれたストーリーを年老いた男が老女に読んで聞かせるスタイルで話が進む。だが、正直なところ、映画として惹かれるのは回想シーンの方だった。肉体労働者の青年と、富豪の娘の恋愛が描かれているのだが、そのみずみずしさというか、ほろ苦さに何度も胸が一杯になった。僕は基本的にダメ男系を自認しているので、自分の恋愛体験でも、「相手に手が届かない感」を味わうことが良くあったので(カミサンの時もそうだったっけ?)、この手の映画に弱いのだ。
 ただ、目が肥えてしまったのか、映画全体としては、残念ながら五つ星はあげられない。せっかく良い話なのに、認知症カップル(あえてそう書く)の現在進行形のストーリーが弱すぎるのだ。もう少しきちんと、今の2人を描いて欲しかった。あと、ラストが個人的にはちょっと…。あれがいいと言う人もいるのだろうけど、ちょっと安直にすぎるのでは?何だか、「若い人が想像で書いた薄っぺらな老人像」に見えてしまったのは僕だけだろうか。
 少々辛口に書いたけど、好きな映画には違いない。悲恋もの、と言う意味では、「サイダーハウス・ルール」をまた見たくなってしまった。
 ただし、「泣かせる」という意味では、予告編のほうが泣けたというのが、本当のところだ。